「頑張れば、体はちゃんと応えてくれる」
運動指導者として16年間、私はそう信じてきました。実際、たくさんの方の体が変わっていくのを見てきましたし、自分自身もそうやって体を作ってきました。
でも3年前、指定難病のシェーグレン症候群と診断されて、この信念は一度、根っこからひっくり返ることになります。
今日はその話をさせてください。
病気になる前の私の「運動観」
私が指導で大事にしていたのは、「健康寿命を延ばして、元気に楽しく過ごせる時間を少しでも長くすること」でした。そのためには継続的な運動が欠かせない。カギになるのは習慣化。そして「頑張れば、何歳からでも体はついてきてくれる」 「頑張れば」です——これが当時の私の軸です。
だから筋肉を増やしたい場合の筋トレなら、超回復のタイミングに合わせて、しっかり負荷をかけた重量で週2〜3回。教科書どおりの、王道の指導をしていました。(実際仕事の場所柄、万人に当てはまる安全な指導をする必要がありました)
今でも覚えているのは、ジムで毎日、決まったマシンを決まった強度(低負荷)で続けているご年配の方の姿です。その継続力とお元気な様子には心から尊敬の気持ちを持ちつつ、正直、心のどこかで「これでどこまで効果があるのかな?」と思っている自分もいました。
なぜなら体には【同じ刺激に慣れてしまう】という機能があるからです。体の「慣れ」を防ぐためのトレーニングの基本原則は、重量、回数、頻度を少しずつ増やして体に新しい負荷を与え続けることです。
つまり 運動は、正しい強度で、正しい頻度でやったほうが効果が高い。
そう考えていたからです。
「やる気の問題じゃない」と、自分の体で知った
病気になって、思い知ったことがあります。
運動には、やる気以外のハードルがたくさんある。
手が痛い日は、上半身のマシントレーニングに手が伸びません。足が痛く痺れが強い日は、下半身のトレーニング全部避けたくなります。だるい日、頭が痛い日は、そもそもジムに向かう気力すら出てきません。
そして怖いのはここからです。できない日が続くと、あんなに当たり前だった運動習慣が、だんだん薄くなっていく。腰が重くなる。「このまま運動習慣も筋肉も消えてしまうんじゃないか」という焦りだけが募っていく——。
16年間「運動を続けましょう」と言い続けてきた私が、続けられなくなったんです。
このとき、あの毎日コツコツ続けていた高齢の方の姿が、まったく違って見えました。毎日運動できる人は、本当にすごい。いや、週1回でも続けている人は、それだけで十分すごいんです。
そして気づきました。以前の私は「ダイエット希望ですね、ではこのメニューで」「筋肉をつけたいんですね、ではこの重量でこの回数で」と、簡易的にお聞きした目的の型に合わせてメニューを組むことが多かった。(もちろんご病気やおケガなどもお聞きして注意します)
でも本当は、その人に合った運動の内容も強度も、その人の体調と、その人がどう生きたいかから見て、初めてわかるものなんですよね。
「こういう体になりたい」と一言聞いて「ではこの内容で」——それだけでは、ぜんぜん足りていませんでした。
今の私が考える「無理しない運動」
病気とともに暮らすようになった今、私の運動観はこう変わりました。
どんなに低負荷の運動でも、素晴らしい。週1回でも、素晴らしい。1分のストレッチにだって、体調を整える力があります。
そして動けない日は、「サボり」じゃなくて「必要な休息日」。罪悪感なんて、どこかに放り投げて、ゆっくり休んでいいんです。
運動の計画って、本当はこういう順番で考えるものだと今は思っています。
- 今の自分の体を、よく理解する
- どう生きたいか、どんな体調で毎日を過ごしたいかを考える
- そのために、どんな運動やストレッチがをしたらいいかメニューに落とし込む
この方法だと、運動とは「やらなきゃいけないタスク」ではなく、「理想の自分自身のためにやってあげたいこと」という気持ちになれるんです。そしてベースのメニューは持ちつつも、その日の体調や気分と相談して、柔軟に変えていい。
……と、ちょっと専門家っぽく言いましたが、実はもっとシンプルな話なのかもしれません。
大きな目標って、たぶん、すごく身近なところにあるんです。
私の場合なら毎日を少しでも負担なく、心地よく生きること。そんな日々が、少しでも長く続くこと。
今日の自分のため、そしてちょっとだけ未来の自分へのプレゼントとして、小さな運動を送ってあげる。運動や健康づくりって、そういうことなのかもって、今は思っています。
おわりに
これは全部、私自身の話です。
でも、体調に不安を抱えながら「それでも動ける体でいたい」と思っているあなたにも、きっと通じる考え方だと思っています。
このブログでは、こんな考え方をベースに、「調子が悪い日でもできる運動」や「体調の波との付き合い方」を、これから少しずつ書いていきます。一緒に、無理なくいきましょう。
